a shining cyalume

如月香澄

chibinova:(『げんしけん』の話をふったとたん、おなじ釜の飯を食ったかのようなくちぶりで、「現視研」について語りはじめる)『げんしけん』ですか。bghsさんは咲ちゃんの会長コスが響いたそうだけれども、やっぱり大野さんの副会長コスなわけですよ。ていうか副会長なんですよ。如月香澄なんですよ。だからそれは『くじびきアンバランス』の話やろ、という突っ込みも甘んじて受けましょう。いやね、もう副会長がやばいぐらい萌えるわけです。たしか副会長萌えは久我ピーだっけ?って、まぁ誰でもいいんだけど、とにかくそうなんですよ。で、どうなんですかそのあたり。副会長抜きに『げんしけん』の話ができると思うんですかあなたは。

bghs:(年上には逆らえず) じゃあ、副会長の話でいいですよ・・・

chibinova:いやまぁそんな調子でね、なんかもう『くじアン』がフィクションで、『げんしけん』がリアルワールドみたいな錯覚をおぼえつつあるってことなんですよ。bghsさん的に『げんしけん』は『さくらの唄』や『めぞん一刻』を抜いて自分ランキングの歴代1位に輝いたとのことですが、具体的にいちばん響いたのはどのあたりですか?

bghs:もちろん、歴代1位っていうのは「おれはおまえより好きだ!」というホームラン競争における本数のねつ造にすぎないんですが・・・

chibinova:つまり、つねに挑戦されているわけですね。とにかく「萌えたんだろ?それを吐けばいいんだよ」ちうことで。 ていうか、考えてみれば恋愛話のほとんどは「本数のねつ造」をいかに巧妙化するか、あるいは客観的事実とは違う「事実」を、いかに自分に(あるいは相手に)信じ込ませるかのプロセスを描いてるんじゃないかなぁ。

bghs:たしかにヘロインうたなくてもヴェルヴェッツは響くけど、「パステルズのバッジをなくしちった」って唄うタルーラ・ゴッシュに響く感覚に近いかもねえ。自分の肌の。 それは、もしかしなくても「オタクだから、恋をした」じゃないけど、オタクだからこのマンガを好きになったってことなんでしょうけど。

chibinova:そういやよく「『げんしけん』を読むと自分の生態をつぶさにほじくり返されているようで、とにかく痛かった」というようなオタの方々の反応を耳にしたんだけど、そういう痛さみたいなのって感じました?

bghs:いや、笹原くんがエロゲしながら荻上さんのコスプレすがたを思い浮かべるところ以外ではあまり・・・

chibinova:じゅうぶん痛いですやん、それ(笑い)。コーサカの「ぼくがエロゲやめるなんてありえないから」とかね。なんかナルチってコーサカに似てるかなぁと思ったんだけど。わたしはまちがいなく斑目でしょうけど。

bghs:そんなだから、どこにでも書かせられないんですよ・・・

chibinova:え?どういうこと?

bghs:いや、「軽くワープしている荻上さん」の妄想からの引用ですが。斑目宣言するから。

chibinova斑目宣言て(笑い)。これはしてやられたり。だって、なんかあの消費型オタぶりがねぇ。あそこまで執念深くはなれないヌルさがアレなんですけど。ていうか、そろそろ大野さんを語ってくださいよ。「bghsと大野さん」みたいなかんじで。なんならオギーでもいいですけど。

bghs:でもね。やっぱり「田中さんと大野さん」で「オギーとササヤン」なんですよ。それは、やっぱり「五代くんと管理人さん」とか「ニルスとモルテン」といっしょで。僕は物語にははいれない。でもみていたい。誰もいない部室がいちばん肌まで近づいた。でも、いっしょにいたい。でも彼ら彼女らは紙とインクで、俺は肉で。みたいな。名作ってのはそういうもんでしょうけど。

chibinova:わたしもスーとオギーで血圧上がりまくったクチだし、それ以前に咲ちゃんへの大野さんの懐き方でグッときたわけですけど。でもみている以上、それぞれに対してなんらかの感情は抱くわけじゃないですか。感情がアレなら、劣情でもいいですよ。なんか人妻もののエロ本みたいな煽りですが。

bghs:・・・そう? じゃあ劣情で(しぶしぶ)。まず「友情、あるいは・・・」っていう間口が異常に広い。男女問わず。chibinovaさんが血圧上がりまくってグッときたのって、どこも過程じゃないですか?

chibinova:そうですね。それぞれに物語上の着地点はきちんと設けられているわけで。オギーにたいするスーの気持ちなんかはいまいち読めないですよね。ただのファンなのか、それ以上なのか。それだけに、いろいろと妄想が可能だったり。

bghs:そう。だから、大野さんが笹原妹と話してるところとかみると、「あれ、話すようになったんだ?」とかうれしかったり。

chibinova:笹原妹の溶け込みっぷりはたしかにすごかったですね。恋のライバルだったはずの咲ちゃんといつのまにか仲良くなって、しまいには「姐さん」とか呼んでるし。で、当初は一般人代表だった咲ちゃんが斑目と衝突することで、非オタ読者との齟齬を埋めていたと思うんですよ。『桜蘭高校ホスト部』におけるハルヒもそうで、あの醒めたキャラでもって微妙なオタネタを相殺していたので、非オタ読者や男性も受け入れやすかった。でもだんだん咲ちゃんも現視研に馴染んでいって、オタになることはないけれども最後は斑目の「お疲れ」で泣いちゃうわけじゃないですか。まぁコスプレには抵抗し続けていましたけど。そのへん非オタ読者も、うまく誘導されてくれたんでしょうか。咲ちゃんと一緒に。

bghs:どうなんでしょうね。非ヲタ読者からしてみたら、齟齬ってただの隙間でしょ? そこには誰でも入れる。でも、その隙間。つまりはスーのオギーへの気持ちとか、斑目が咲ちゃんに抱いてゆく気持ちっていう、二次元にも三次元にもない「間」。そこにだけ在る「間」にね、それこそ「萌えの半分は優しさでできています」をそこに持ってゆけば、ほんと、みんなのことが愛おしく想えますよ。ちゅうか、関係の「係」でいいからそこにいたいっスわ。

chibinova:なんかオチがついたっぽいんですけど、けっきょく劣情の開陳はならずでしたね(笑い)。古い墓のように暴きたかったんだがなぁ。

bghs:いや、まぁ。だから、笹原くんに「許してゆく」荻上さんに劣情ですよ。シールで閉じて隠さないなら。

chibinova:うわぁ、なんかエロっ!!

bghs:いま、梅宮アンナの実父のように指差しながら「それを言えばいいんだよ!」って云っただろうが!!

chibinova:だって・・・そこまで「いやらしい」ことを言う人だなんて思ってなかったんだモン!

bghsマイ・ブラッディ・ヴァレンタインもホワイト・カム・カムも歌詞エロいから別にいいんですよ。シューゲイザーたるものムッツリで在れ、ということで。

chibinova:エロいのはかまわないんだけど、ムッツリである必要はないんじゃ・・・。ともあれ、きょうはだいたいこんなところですかね。

bghs:そうですね。それじゃ、そろそろ堕ちまーす(←いちど云ってみたかった)。