『わずか一小節のラララ』 (くらもちふさこ)

ソルファ

「ものまねじゃなくて弾けるんだぜ みんなに倫子の実力聞かせるチャンスだぜ あきらめちゃだめだ なにごとにも 挑戦してみようぜ」


『わたしは カーテンの陰で ふたりのために奏でる

やりきれない 弾けば弾くほどつらくなった せめて この一音一音が ことばであれば 今の自分の気持ちが伝えられるのに!

そうだ

じぶんでことばにしてしまおうか

・ ファ - "好きです"
・ ソ - "大好きです"
・ ラ - "愛してます"

音のラブレターだ!


きれいな服きて踊るよりなん倍もハッピー ああ ピアノが こんなに楽しいなんて!』


「キーボードが こんなに楽しいなんて!」

ラ ラ ラ


あこがれた、"やさしく さしのべられる手"ではなく、あたたかい握手。


そうして演奏された音が、君の部屋にあるレコードには吹きこまれている。それだけ覚えておいてくれたなら――こんな文章、忘れてくれていい。