『ヘヴン』 (遠藤淑子)

just like heaven

少なくとも、おれ自身の意識は生きたがっていないのだと思うけれど。細胞のひとつひとつが、生きるための努力をしているのだとしたら。こうして井戸を覗き込む、意味を見出せぬそんな行為すら愛おしい。その底で、誰かが泣いているかもしれないから。声をかけて、ロープを探すために走りたい。走っているあいだだけは、そして誰かがその端を握るロープを、全力で曵いているあいだだけは。自分も他人も赦せるような気がするから。