トーキング・アバウト・高橋マリ子 5

マリ子とクローバー

自分なりにいろいろ考えてみるのだが
正直なところ、さっぱりわからん
果たしておれはどの辺りまで歩いてきたのか
その辺が特によくわからん
頼りないが一応灯りは点いている
ボロアパ−トの軒先を照らす位の灯りは

これまでに書いた文章は全て破り捨てた
おれは因果律から解放され、アストラルな死を迎えた
知ったかぶりと被害妄想と恨みと失望とに
鼻のてっぺんしか見えない程にどっぷり浸かっていたおれは
このくたびれきった肉体以外全て真新しくなったのだ
時計仕掛けのオレンジに差す油のおかげで

今のおれがこれまでに得た経験の集積によって成り立っている
起きたまま寝言をぬかす外野共には糞でも味わえる鉄の舌をくれてやる

そう、現在以前のおれは生ゴミ並みの存在だったのだ
ヒトラ−が縮んで酒鬼薔薇がオナニ−しているビデオを観ながら
万引きに精を出しているようなくそったれだったのだ

そのクズ的存在から死ぬ程の思いで脱却した成年のはずなのに
まともなおつむの入手に成功したはずなのに
またもや自分の居場所を見失ってしまった
全く自分自身のトレ−スさえままならぬとは情けない
やはり世迷言に彩られたうすのろな黒い湿地(しかも生暖かい)
の中でしかおれは自分の姿をとらえることができないのか

まあそれもいい
所謂まともな奴だって回虫の一匹や二匹飼っているもんだ
おれだって薄汚ないのを少しばかり隠し持っていてもいいだろう
そう、おれは去勢された色ボケ野郎になってやる

ロボトミ−だろうが洗脳だろうが好きなように料理してくれ
おれは偉大な赤鼻の人柱になってやろうじゃないか